高校数学でわかる複素関数 微分からコーシー積分、留数定理まで (ブルーバックス)

留数定理という言葉だけならどこかで聞いた事がある高卒のにわか理系です。本書で初めて複素関数論に本格的に触れましたが、とても読みやすいと思いました。一応…E・クライツィグ氏の「複素関数論」や何冊かの類書を読んだ事はあるのですが、どうも要点を掴めず要領を得ませんでした。他の方のレビューにあるように、必要最小限の内容なのかも知れません。それでも私はこの大学数学（特に留数定理）を少しでも理解できたのがとても驚きで嬉しかったです。使われている数学は確かに殆どが高校数学です。内容の多くは複素関数の「微分積分」ですが、微分はこれまでの高校数学シリーズと同程度であり、積分も高校レベルを外れておらず、所詮はシグマの連続型だと思えば簡単だと思います。高校レベルを外れているものは付録で解説されています（ガウス積分など）。コーシーの積分定理の導出で用いられている「グリーンの公式」だけは個人的に面食らいましたが、実数関数の周回積分と同じ事を複素平面でやるとどういう計算になるのかを考えた結果がコーシーの積分定理なんだな、と自分なりに解釈してどうにか乗り切りました…（汗）有理関数、整関数、零点の辺りはサラッと触れられている様子で今一理解できず、私はまだまだ勉強が必要ですが、コーシー・リーマンの関係式、コーシーの積分定理と多重連結、そして留数定理まで流れるように読み進められ、留数定理の活用（留数積分の例が3つ解説されています）まで楽しく勉強できました。ただ私のように、本書で留数定理ばかりつまみ食いしようとすると、主値～リーマン面、ML不等式、代数学の基本定理～最大・最小の定理、解析接続、などが疎かになりそうです。実際に本書は留数定理の理解導出に必要な「コーシーリーマン関係式・コーシーの積分定理・コーシーの積分公式・(z-a)^nの積分・複素テイラー展開・ローラン展開・特異点・留数定理・留数定理の応用」辺りは一つのストーリーとしてよく繋がっている感じですが、その他は類書も読んで知識を補った方が良さそうに思えました。（もちろん私は複素関数論自体をもっと勉強すべき人間ですが…）