名碗は語る

茶道美術研究の大家、故・林屋晴三先生による歴史的な名物茶碗の考察をまとめた書籍です。先に姉妹書と言える〈名碗を観る〉が出版されていますが、その〈観る〉というコンセプトに対し、本書は、茶碗と〈語り合う〉という視点で再編成されています。掲載される作品も 重複はあるものの、前作の22碗に対して本作は59碗と、作品点数が大幅に増えていることも大きな魅力です。焼き物の図録と言えばだいぶ以前に撮影された古い図版を使い回しするケースが多く、「またこの写真？」と残念に思う事がよくあるのですが、本作（観る・語る）は新たに撮りおろしがされており、陰影のある圧倒的迫力の写真が今まで見慣れていたつもりの茶碗の〈新たな表情〉を見せてくれます。美術館や書籍では中々見ることの出来ないアングルも豊富に掲載されているのも嬉しいです。価格は高価ですが、内容はそれらを満たして余りある優書ですので、姉妹書の〈名碗を観る〉と揃えて堪能する事をお勧めします。