危機管理のノウハウ part 2 80年代・闘うリーダーの条件 (PHP文庫 サ 1-2)

佐々氏の危機管理の特徴の一つとして、後方業務、いわゆる兵站（ロジスティックス）を重視する姿勢がある。大学闘争の際の糧食補給やあさま山荘のおりの温食設備など、氏の著作にその苦心の跡を伺うことができるが、本編はその経験に裏付けられた、兵站業務についての具体的な記述が満載されている。印象的だったのは、「ゴウ・ダッチ」すなわちドライな割り勘精神に基づく経理業務の心得を説明した一節。「金のことをあれこれいうのははしたないとされているが、事が終わった時に誰が支払いをするかが分からなくなってしまう」という著者の指摘は、現在もまだ示唆に富むものであろう。その他、福利厚生や食事など「食う寝るところに住むところ」を重視せず、それらがひとりでにできてくるものであると考える「天然居士」になってはならないとも説く。これもまた、現在でも耳の痛い方が多いのではないだろうか。自分自身への自戒も込めて、じっくり読みこんでいきたい一冊である。